2018年10月17日 15:01
初秋のドイツ トラック紀行ふたたび その8
ヴェルト工場の話が長くなりましたが、ラストはCKDなどの出荷についてです。ここからは工場の建屋から外に出て、コンテナの荷積みの状況などを見学します。
前述の通りCKDの仕向け地はロシアが40%強と圧倒的に多く、通常は輸送コストの安い船でコンテナを運ぶのですが、ロシアだけは陸路トラックで運ぶことが多いそう。ロシアまでトラックで5~6日、船の場合は2週間かかるんだとか。また、コンテナに収まりきらない大きなキャブは、4台ないし8台分のキャブをトラック1台で運ぶケースも多いそうです。
コンテナの船積みに関しては、「コンタゴ」という専門の業者が行なっています。CKDのコンテナは、日本では「トンボ」と俗称されるトップリフター(コンテナ用のフォークリフトの一種)でコンテナシャシーに載せられ、工場から500mほど離れたライン川沿いのヴェルト港に運ばれます。
我々もバスで見学しましたが、ヴェルト港は本当に目と鼻の先にあるんですね。これがヴェルト工場の最大の地の利の1つでしょう。ヴェルト港には3基のシップローダーが設けられており、ヤードから船にコンテナが載せられます。船は主にバージと称する艀(はしけ)が用いられていますが、今年は雨不足でライン川の水深が浅いため、本来はコンテナが200基積めるのに、100基しか積めないんだとか。バージはライン川を下ってベルギーのアントワープやオランダのロッテルダムなどの海洋港に荷物を運びます。そこからコンテナを大きな船に載せ換えて海外に輸出するわけですね。いっぽう、トラックの場合もヴェルト港からフェリーにロールオン・ロールオフして運ぶことが多いそうで、物流の動脈としてライン川の存在は極めて大きいものがあります。

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コンテナヤードの風景はどこも一緒ですね、トンボが忙しそうに稼働していました

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ヤードに並ぶヨーロッパの海コン運ちゃん。でも、ここはライン川なので、川コン運ちゃんと呼ぶべきでしょうか?

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ヤードにはシップローダーが3基稼働しています

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向こうに見えるのがバージですね。確かに川の水深がかなり下がっているのがわかります

確かにドイツをはじめヨーロッパの国々では、河川による物流が思いのほか盛んで、そんな光景を目にすると日本人は「へぇ~」なんて思っちゃいます。船を使った河川による物流を河川舟運(しゅううん)と言うそうですが、実は日本でも、江戸時代までは年貢米などの商品の流通には河川舟運が用いられてきたし、昭和の中頃までは「イカダ下り」で木材を山から運んでいたことが知られています。でも、今の日本ではほとんど見られませんから、やっぱり「へぇ~」なんですね。
せっかくなので、もう少し勉強してみると、日本財団がまとめた「欧米の河川舟運産業の実態及び需要に関する調査」によると、「欧米地域では、内陸輸送手段のひとつとして長く張り巡らされた広大な河川を利用した舟運業が、トラック及び鉄道と共存しており、その事業規模及び形態は日本の内航海運に類似するものと推測される。我が国と比較して平坦な内陸部が多い米国や欧州諸国には、河幅が広く適度な水深も確保され、流速も緩やかな大河があるため、大型船舶の航行も容易であることや、河川港湾も発達していることに加え、各国の都市が河川で繋がっていることから、古来より人々の重要なライフラインと位置づけられている」と記されています。
ちなみに欧州の主要内陸水路は全長2万9000km 以上におよび、港湾とターミナル数は400 以上もあるそうです。EU域内の河川舟運による物資輸送量は6%(道路輸送量76%、鉄道輸送量18%)ですが、ライン川の下流域のオランダが35%、ベルギーが15%、ドイツが12%と、河川舟運による物資輸送の比率が高くなっています。ちなみに河川舟運を中心とした内陸水運は、安全で信頼性、経済性が高く、また、環境にやさしい輸送手段であると認識されているそうで、将来的に更なる開発のポテンシャルも高いと日本財団の報告書は結んでいます。
日本の河川は短くて流れが速いし、雨が降ると一気に流れる特徴があるので、ヨーロッパの例をそのまま日本に置き換えることはできないと思いますが、モーダルシフトの対象として、実は内航海運も鉄道もキャパシティが一杯いっぱいといいますから、もう一度河川舟運の可能性を探ってみるのも面白いんじゃないかと思うんですね。そこで考えるに、水陸両用バスがあるんだから水陸両用トラックがあってもいいんじゃないの、道路が渋滞してたら川に入ってスイスイ走るの、どうでしょう? シーン。賛同者無し。水陸両用トラックのアイデアは、ドンブラコ・ドンブラコと早くも川の流れに消えていくのでした。


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