2013年8月28日 22:34
UDトラックス「クエスター」がもたらすもの
UDトラックスの新興国向け大型トラック「クエスター」の発表会が行なわれたタイ・バンコクから、今日帰国した。「クエスター」は日本市場では販売しないので、日本のトラックユーザー/ドライバーは「うちらには関係ない」と思うかもしれない。しかし、ここにきてトラックのグローバル化はさらに一段と加速しており、特にアジアに軸足を置いた新興国向けのトラック市場は、日本メーカーの主戦場であり、正念場になる可能性がますます高くなってきた。逆説的にいうと、それはガラパゴス化が懸念される日本のトラックにも大きな影響を及ぼす潮流なのだ。先日は、三菱ふそうも南インド・チェンナイ発の新興国向け中・大型車を発表しており、ダイムラーとボルボという世界の2大メーカーを親会社とする日本のトラックメーカーが、ほぼ時を同じくして新型車を投入したことは注目すべき出来事だろう。日野自動車、いすゞ自動車という純国産メーカーも手をこまねいて見ているはずがなく、むしろ日本の4メーカーが、新興国という、よりパイの大きい市場で切磋琢磨することによって、いずれ日本車の「牙城」を築き上げることができれば、それは、日本のトラックのガラパゴス化を回避し、ホームマーケットである日本市場にも多大なフィードバックが期待できる大きなムーブメントになるのではないだろうか。
今回初めてタイ・バンコクを訪れ、タイのトラック事情を垣間見ることができたが、なるほどタイでは普通トラック市場の約9割を日本車が占めており、中国や韓国メーカーが進出しても、日本車に対する信頼度が圧倒的に高く、シェアを占めるには至っていないという。しかし、「新興国」と呼ぶことがふさわしくないほど発展したタイにあっても、「こんな古いトラックがまだ走っているよ!」と感嘆するほど、トラックの車歴は相対的に長く、ドライバーにとっては劣悪な「職場環境」も散見された。今回の「クエスター」は、これまでの「大型のシャシーに中型のキャブ」という新興国向けトラックの「常識」を覆し、ドライバーの安全や運転のしやすさ、快適性などにも重きを置いた大型のキャブを新設計しており、トラックドライバーにもボトムアップをもたらす全く新しいモデルを目指したという。その一つをとっても力の入れ方が窺い知れると思うが、いずれにしてもUDトラックスが社運を賭けたトラックであることは間違いないのだ。
そして、この「クエスター」を開発当初から手掛けてきたのがUDトラックスのプロダクトストラテジーバイスプレジデントの岸伸彦氏だ。岸氏は、バンコクでの発表会でもプレゼンテーションを務めるなど、まさにクエスターの開発の「顔」として大活躍だったのだが、実は、今回のバンコク取材は、「クエスター」自体もさることながら、その岸氏の「晴れ舞台」を是非この目で見たいという思いが強かったのだ。少々個人的な話になるが、キャップにとって岸氏は、トラックが大好きな永遠の少年なのである。岸氏というより今でも「岸君」と呼んでしまうのだが、私が「モータービークル」という商業車専門誌の編集を手掛けていた頃、よく編集部に遊びに来た中学生が岸君だったのである。彼は、我々編集部員が舌を巻くほどトラックに詳しく、目をキラキラさせてトラックに対する夢を語ったものである。岸君はその夢をずっと追いかけ続けてきた。バンコクで久しぶりに再会した岸君は、相変わらずトラックが大好きな永遠の少年だった。「クエスター」は、その永遠の少年の夢の結実なのである。以下、「クエスター」の詳細を伝えるUDトラックスのプレスリリースの要約である。



新興国市場向けの大型トラック「クエスター」発表

UDトラックスは2013年8月26日、新大型トラック「クエスター」をタイ・バンコクで発表した。クエスターの投入で、アジアをはじめとする新興国市場を狙う。
新大型トラック「クエスター」は長距離輸送や配送、建設現場、鉱山開発などの幅広い分野に対応できるよう設計されている。ボルボ・グループのグローバルな技術と日本のモノづくりの技を結集して、頑丈で信頼性が高く燃費性能に優れたトラックを実現。部品は同車が消費されるアジア市場で調達、生産も現地で行なわれるなど、地産地消の考えにもとづき、現地調達・生産体制を確立した。
「UDトラックスはこれまで日本市場向けに高品質なトラックを開発、またアジア、アフリカ、中東、中南米市場にトラックを輸出し成果を上げてきた。しかし日本以外の市場向けに特化した商品は未開発だった。新興市場向けトラック『クエスター』の投入で、UDトラックスの歴史に新しい1ページを刻む」(UDトラックス会長ヨアキム・ローゼンバーグ)
グローバルなノウハウで新興国市場の多様なニーズに対応
クエスターは燃費性能に優れた経済効率の高い輸送を可能にする一方で、共通プラットフォームをベースに、新興国の多様なニーズに対応する幅広い大型車種を競争力のある価格で提供する。こうした試みは日本のトラックブランドとして初めてとなるだろう。 今回の新型車でUDトラックスは、同社初となる国外での一括生産を開始する。UDトラックスとボルボ・グループのグローバルな開発・生産ノウハウを駆使し、新興国市場で戦えるトラックを投入する。
「各国から400人以上ものエキスパートがさまざまな知識と経験を結集し、設計から開発、認証、商品化に至るまでの業務に貢献した。経験豊富なエンジニアが要求する品質・性能水準を実際の稼働現場でも発揮できるよう、開発にのべ150万時間、品質・性能確認試験に6万5000時間を費やした」(ローゼンバーグ)
顧客により近いところで
UDトラックスは顧客の効果的な輸送業務のため、広域のサービスネットワークでさまざまなサービスや「UDアフターマーケット・サポート」を提供する。戦略的に配備した直営・地元の販売・サービス拠点などでは、顧客の事業費削減や燃費・稼働率向上への提案に向けて準備が整った。
また「UDアフターマーケット・サポート」に加えて、車両故障時の支援や予防メンテナンスの分析、使用実績に応じた整備スケジュールの作成などを行なうテレマティクスシステムを搭載。「クエスターそのものが信頼性の高いソリューションを提供するが、それだけでなく、万が一故障した際も、UDトラックスのサービスアドバイザーが車両の位置を特定し、迅速にサポートを提供する」(ローゼンバーグ)
クエスターは2013年第3四半期にバンコクの工場で増産体制に入る。同工場は国内市場向けだけでなく、東南アジアやその他の新興国市場への輸出拠点となる。また、中国、インドでもそれぞれの市場向けに生産する予定となっている。


さまざまな顧客ニーズに応える新大型トラック「クエスター」

クエスターは、大型車を利用する輸送業界向けに開発されたUDトラックスの新世代トラック。共通プラットフォームで長距離輸送や配送、建設現場、鉱山開発などの幅広い用途に対応する。
クエスターは進化し続ける市場の顧客ニーズに応えるため、これまでの同社のラインアップの中で最もコスト効率の高い車となっている。車両そのものが長期にわたって高い品質を保持するたけでなく、整備のしやすい造りとなっている。また、ボディ架装なども含めて幅広いオプションの組み合わせができるため、顧客の用途に応じてカスタマイズしたソリューションを提供できる。
豊富なバリエーション
「クエスターの最大のメリットは、ユーザーが個別のニーズや用途に応じて多彩な組み合わせができること。そのため、さまざまな機能を取り揃えた。市場ではこれまで実現されてこなかったことだ」(UDトラックス・プロダクトマネジメント・バイスプレジデント松尾泰造)。クエスターでは、7種類のバリエーションを用意してさまざまなニーズに応える。例えば、長距離輸送や配送には4×2リジッド/トラクターや6×2リジッド/トラクター、6×4リジッド/トラクター、 8×4リジッド、そして建設現場や鉱山開発には6×4リジッド/トラクターと8×4リジッド。6×4リジッド/トラクターと8×4リジッドは厳しい道路条件を想定した設計になっており、特に耐久性と高い信頼性が重視される建設現場に適している。6×2リジッド/トラクターでは、空車状態で車軸を上げることができるリフティングアクスルを備えている。
また、マルチリーフ・リヤサスペンションやハブリダクションにより、建設現場や鉱山開発で優れた耐久性とロードクリアランス(最低地上高)を実現。
確かなエンジン技術
クエスターが誇る2種類のエンジンは燃費効率が良く、さまざまな用途で優れた性能を発揮するよう設計されている。8リットルディーゼルエンジン(GH8E)の性能は高く、配送や建設現場に最適。また11リットル(GH11E)は、ボルボ・グループのグローバルな技術と日本の生産品質がベースになっている。
頑丈で柔軟性のあるシャシー
高い柔軟性と品質を兼ね備えたシャシーは、クエスターの最大の特徴のひとつである。ホイールベースや燃料タンク容量のサイズ、排気系部品の向きなど多様な設定が用意されているため、シャシーのさまざまなレイアウトが可能。
またクエスターは、豊富なオプションを取り揃えることで、ADR(危険物の国際輸送に関する欧州協定)を始めとする各市場の法規に適合している。
空気力学的に設計されたキャブ
クエスターではルーフおよびサイド・エア・デフレクターのオプション装備が可能。同デフレクターは空気抵抗の低減を目的としている。 またキャブにはロングハイルーフキャブとスタンダードキャブの2種類がある。ロングハイルーフキャブにエアダムバンパー、そしてスタンダードキャブにはエアダムバンパーに加え、最低地上高をより確保できる建設現場用スチールバンパーもオプション装備できる。
さらにオンロード用キャブにはサイド・エア・ベントが装備され、キャブ側面への泥はねを防ぐ。 またロングハイルーフキャブには従来のものよりワイドな幅のベッドを2段装備して、ドライバーの休息と収納スペースの面から、効率的な長距離輸送を支援する。


新興国向け新型車「クエスター」 ―― 
"The best of three worlds" (3つの要素)

UDトラックスの「クエスター」は3つの要素、すなわち①UDトラックスが受け継いできた日本のモノづくり、②ボルボ・グループによる世界水準の技術力、③現地調達・生産――を結集し、新興国市場のさまざまなニーズに応える。
クエスターのコンポーネントは、UDトラックスとボルボ・グループの長年の経験と広範囲にわたる厳しい品質確認試験により生み出された。これにより、新興国市場での同車の競争力は高まる。「クエスターは、顧客ニーズへの深い知見、UDトラックスがアジアでの長年の経験から得た先端的ノウハウ、ボルボ・グループのグローバル体制、現地から優れた部品を調達しようとする試みの結集だ」(UDトラックスプロダクトストラテジーバイスプレジデント 岸伸彦)
日本のモノづくり
クエスターはUDトラックスの他の商品と同様に、顧客ニーズとモノづくりの原点である工場の声を取り入れる日本の「現場主義」によって生み出された。70年以上にもおよぶ同社のモノづくりの歴史がクエスターに結集した。 その具体例として、クエスターが搭載する最高水準のディーゼルエンジンがある。8リットルエンジン(GH8E)は、高性能・高燃費で高い評価を受けているUDトラックスの7リットルエンジン(GH7)をベースに開発。11リットルエンジン(GH11E)はUDトラックスの生産技術とボルボ・グループの先端技術の組み合わせによるもの。さらに、空気力学的に設計されたキャブや大きな積載が可能な大容量アクスルも、UDトラックスのエンジニアリングによるものである。
ボルボ・グループのグローバルな強み
UDトラックスは、大型商用車世界大手ボルボ・グループの一員として、世界に広がるグループの開発ネットワークを駆使してクエスターを開発。開発プロジェクトでは世界12カ国のエンジニアが設計、開発、認証、商品化に携わった。「高い仕様対応性と品質を兼ね備えたシャシーが特徴。グループ全体が培ってきた商用車技術からこうした設計が生まれる」(ボルボ・グループ開発部門レンジディレクター パトリック・トロンベール)。ボルボ・グループのグローバル基準に沿った広範囲な試験をシャシー全体に実施することで、シャシーへの信頼性と優れた耐久性を保証する。
現地調達・生産
クエスターは、UDトラックスが国外で一括生産する初めてのトラック。現地調達・生産により、価格に敏感な新興国市場で優れた性能を持つトラックを手頃な価格で提供可能となる。また、広域のサービスネットワークがUD純正整備・部品を通じて車両の稼働率を支える。
「3つの要素を組み合わせたクエスターは、優れた性能と豊富な価値を提供し、あらゆる面から顧客の期待に応えられるトラックだ」。「部品一つひとつが、信頼・耐久性そして燃費・安全性を仕様環境で十分発揮できるよう、クエスター専用に開発されている」(岸)


クエスターが可能にする低燃費輸送

トラックドライバーが最も重要視するのは燃費。特に新興国市場のドライバーにとって不可欠な要素だ。クエスターは、パワートレインの最適化や省燃費運転支援システム、空気力学的に設計されたキャブなどにより、低燃費運転と環境負荷低減を同時に実現する。
クエスターのパワートレインはクラス最高水準の燃費を誇る。エンジンはGH8EおよびGH11Eの2種類を用意、そして燃費性能を最大限に引き上げる機能をバランス良く兼ね備えている。エンジン出力やトランスミッション、ファイナルギアなどで構成される幅広いドライブラインはパワートレインの最適化を可能にする。「高スペックのパワートレインにより、エンジンは常に最適に制御され、険しい急勾配の場所でも最高の燃費と経済的な輸送ができる。まさにこれが新興国市場に向けた独自の提案だ」(UDトラックス・パワートレイン・エンジニアリング・バイスプレジデント アンデシュ・ラーション)
さらに、エアロダイナミック・キャブもクエスターの強みだ。空気力学的に設計されたキャブは、ルーフ・エア・デフレクターとサイド・エア・デフレクター(オプション装備)により燃費を削減。 また適切なサイズのコンポーネントやアクスルとの組み合わせで多様な車種を取り揃えたことで、高いGCW(連結車両総重量)とGVW(車両総重量)を可能にした。
またクエスターには、リアルタイムで機能する省燃費運転支援システムを装備。 わかりやすく操作も簡単。同システムは走行に関する素早いフィードバックを提供することで、ドライバーの低燃費運転を支援する。また、スイート・スポットと呼ばれるエンジンの最適燃費の回転域を最大時間確保するため、多目的ディスプレイが最適なシフトやアクセルの加減をアドバイス。また最大15回分の走行距離、燃費、スイート・スポットなどのデータを蓄積して輸送効率改善を図る。
省燃費運転のカギは、交通状況の予測やそれに伴う穏やかなアクセル操作にある。こうした運転をマスターするには、技術と長い経験が必要である。しかし省燃費運転支援システムにより、どんなドライバーも経験の有無に関係なく省燃費運転を行なえる。 今後、すべての運行データを収集・コンピューター分析可能なテレマティクス・システムを導入予定。ドライバーの運転管理力、高い燃費効率、積極的なコスト管理に大きな可能性がもたらされる。

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オープニングに忍者(?)登場。各国のメディアに大うけでした

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アンペールしたクエスター。会場からどよめきが......

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司会進行はUDトラックス広報の栗橋さん。今回のイベントの準備とメディアの対応で大忙しでしたが、みごとに大役を果たしました

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ヨアキム・ローゼンバーグUDトラックス会長

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キャップ的にいうと「エグカッコいい」スタイルで登場 2段ベッドを備えるハイルーフだ

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永遠のトラック少年 岸君のプレゼンにキャップは感無量でした

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スタンダードルーフのGWE6×4トラクタ。390馬力エンジンを搭載し、GCWは70t

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こちらは建設系のGWE6×4トラクタ。GCWは80t

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運転席はシンプルな使いやすさを追求

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シャシーフレームは架装のしやすいフラットな形状

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