2011年6月30日 21:27
災害物流に真価を発揮した岩手県トラック協会のめざましい仕事ぶり

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岩手県紫波郡矢巾町にある岩手県トラック協会に、その人はいました。岩ト協専務理事の佐藤耕造氏70歳。あの東日本大震災発生直後の大混乱の中で、今では「岩手方式」と呼ばれる、救援物資の荷受け・仕分け・搬出の一括管理を成し遂げ、被災者にいち早くスムーズに救援物資が届けられるよう獅子奮迅の活躍をした岩手県トラック協会の立て役者です。

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昨日ご紹介した東北地方整備局の迅速な道路啓開作業のおかげもあって、緊急救援物資は震災発生直後から、その多くは全日本トラック協会傘下の運送事業者の手により被災地に続々と届き始めました。その対応は迅速で、運んだ救援物資も必要かつ十分な量でした。しかし、その緊急救援物資がなかなか被災者の元に届かなかったことは、ご存じの通り。1つには、被災地があまりにも広大で、被災した人たちの数、避難所の数があまりにも多かったことが大きな理由ですが、もう1つは、救援物資の集積場での荷受け・仕分け・搬出作業がスムーズに機能せず、いたずらに時間ばかりが掛かっていたことがあげられます。その作業を司るのは主に県の職員でしたが、慣れない作業の上に、混成部隊のため命令系統もはっきりせず、各地の現場は大混乱に陥っていたと言います。
そんな中で、岩手県は救援物資にまつわる作業の委託を岩手県トラック協会に打診。言ってしまえば、その作業の実務の一切合財を「丸投げ」したわけですが、これがのちに大きな実りとなって返ってくるとは、おそらくその時点では県の人間も分かっていなかったと思います。
岩手県から業務委託を打診された佐藤専務理事は、県の職員が今回の震災での対応で手いっぱいであることも分かっていたので、これを快諾。また、震災直後、被災した運送事業者の社長に会った際、「専務、おら何もねくなったじぇ、家族同様の運転手もいねくなった。専務、助けてけろ」と言われ、こういった多くの被災者のためにも今回の緊急救援物資の輸送を絶対に成功させると心に決めたといいます。
佐藤専務は、当初緊急救援物資の集積場となっていた倉庫から、新たな集積場として岩手産業文化センター「アピオ」を指定します。このコンベンションセンターは、極めて広い上に、床の耐荷重もあり、大型トラックが直接乗り入れることができます。また、2階部分からは救援物資が全て見渡せるため、どこに何があるかひと目で分かるという利点もあります。さらに東北自動車道の滝沢ICのすぐ近くで、広大な駐車場があり、トラックステーションもすぐそばという地の利もありました。

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「アピオ」に集められた救援物資。他県の集積場に入りきらなくなった物資も散見される

他の集積場では、緊急救援物資を運んできた大型トラックが荷降ろしのため何時間も待たされるということがざらにありましたが、「アピオ」では、ウイングボディにフォークリフトという、今や物流業者には常識の最強コンビによる機械化を図ったため、スピーディかつスムーズな荷積み・荷降ろしを実現。佐藤専務もそうですが、岩ト協職員の中にも運送事業の現場で働いていた経験者がいたため、彼らが陣頭指揮に立って救援物資の一括管理まで行ない、大型トラックから降ろされた救援物資は、即座に仕分けされ、今度は中型トラックや小型トラックに載せ替えられて、県内12市町村、1000箇所以上ある避難所に送り出されました。

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ウイングボディとフォークリフトによる荷役が主体のため、とてもスピーディだ。この4トン車は仕分けされた物資を積んで避難所に向かう

まさに「餅は餅屋」、トラック運送事業という仕事を誇らしく思わずにはいられません。もちろん24時間体制で業務を行ない、さらに「火事場泥棒」を防ぐため警備などの関連業務も岩ト協が担うなど、その仕事ぶりは徹底しています。
「岩手方式」は、手痛い教訓を残した災害物流の中で、先見の明と「餅は餅屋」の技と地元を愛する人間の意志がなし得た成功例として、もっと多くの人に知ってもらいたいと思っています。

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「アピオ」の2階に設けられた岩手県トラック協会の輸送対策室

その「アピオ」に佐藤専務に案内していただきましたが、まだまだ食料や生活用品を欲している被災者は数多く、「アピオ」は今も機能しています。決して「もう済んだ話」ではない...。8両あるフォークリフトのオペレーターをはじめ、「アピオ」では地元の運送会社のドライバーが働いています。津波にやられた沿岸部の漁業関係の仕事もそうですが、内陸の自動車部品などの製造業も震災のダメージが大きく、従って地場の運送事業者の仕事はまだまだ回復していないと言います。「まだ救援が必要だけど、自立も必要。今はその端境期かもしれない」。ドライバーの一人はそんなことを言っていました。

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積み込みを終えて一服する地元ドライバーの皆さん。ひと頃に比べて、救援物資の出入りはだいぶ少なくなったという

この「アピオ」での仕事が済んでも、佐藤専務をはじめ岩手県トラック協会の人たちには、県内のトラック運送事業者の立ち直りをサポートする大事な仕事が待っています。それは決して安楽な道ではない...。しかし、1つの大きな仕事、素晴らしい仕事を成し遂げた事実は、復興への大きな原動力になるはず。そして何よりも、トラック運送事業という仕事が誰にも後ろ指を指されることのない、胸を張って誇れる仕事であることを証明したことは、全国の事業者、トラックドライバーにとっても、とても嬉しい話だと思います。

「フルロード」第4号では、ここでご紹介した東北地方整備局、岩手県トラック協会をはじめ、被災地の現場でめざましい仕事を成し遂げた人々とトラックの話をお届けしたいと思います。 (キャップ)