2010年9月17日 16:48
喜連川にて その3
IMG_1986.jpg喜連川では、三菱ふそうのアイケ・ブーム副社長にインタビューする機会も得た。ブーム副社長は開発本部を統括しており、いわば三菱ふそうの技術畑のトップである。以下はそのインタビューの要約である。

「喜連川研究所は今年30周年を迎えたが、三菱ふそうにとって、そしてダイムラー・トラックグループにとって、今までにも増して『喜連川』は重要な存在になるはずだ。その1つの例として象徴的なのが、今年末までに完成する予定のハイブリッドパワーパックの台上試験設備である。この施設には約100万ユーロを投資したが、これによってエンジン、Eモーター、トランスミッション、インバーター、バッテリーを台上で試験できるハイブリッド開発の新しい施設が喜連川研究所に誕生することになる。ちなみに能力的には500キロワットの出力にも対応できるので、大型トラックのパワーパックもテストできる施設となる。もちろん、ダイムラー・トラックグループのグローバル・ハイブリッド・センター(GHC)の一翼を担う施設なので、三菱ふそうのみならず、メルセデスやフレイトライナーのハイブリッドパワーパックの開発も行なうことになる。すなわち、ダイムラー・トラックグループのハイブリッドパワーパックの技術開発は、すべて日本(川崎および喜連川)で行なうということである。ただ、間違えないで欲しいのは、GHCはハイブリッドパワーパックの開発を行なうけれど、個々の車両へのアプリケーションはマーケット毎にローカル・アプリケーション・センターが行なう、それがダイムラー・トラックグループの明確なルールである」。

IMG_1538.jpgさらにブーム副社長が明かしたところによると、今年末にはフレイトライナーのカスケディアのハイブリッドの供試車両をウォルマートに引き渡すことになっており、この車両にはGHCのステッカーが貼ってあるという。また、これまでメルセデスのアテーゴやフレイトライナーの中型トラックのハイブリッドはイートン製だったが、これもGHCが開発したハイブリッドに切り替える方針だ。

「ダイムラー・トラックグループのオリジナルのハイブリッドは、キャンター・エコハイブリッドの小型用に続き、中型用、大型用と、将来的には3つのクラスすべてオリジナルなハイブリッドを開発するつもりである。ただ、ハイブリッド車の普及に関しては、ハイブリッドコンポーネントの搭載コストと燃料のコストを勘案して考えなければならない。従って予測するのは大変にむすがしいが、燃料のセービングのインパクトが搭載コストより高まる時期がいずれやってくると思う。我々はそれをマジックモーメントと呼んでいるが、その時には、車両価格が多少高くても、ハイブリッド車を燃料経済性の観点から購入する機運が生まれるはずだ。日本のみならず、さまざまな市場で、そして大・中・小のトラック・バス、すなわち全ての商用車のカテゴリーで、必ずニッチマーケットが存在すると思う。今回の喜連川の台上試験設備もそれに備えたもので、オリジナルのハイブリッドの開発を加速させたいと思っている」。

IMG_5507.jpgなにげに書いてしまったが、ブーム副社長の話はスクープも含んでいる。特に、ダイムラー・トラックグループがフレイトライナーのカスケディアやベンツ・アクサーなど、大型トラックのハイブリッド化に力を入れ始めていることは注目に値するが、その中枢をなす開発が喜連川をはじめとする日本でなされている事実は、三菱ふそうの「技術力」がダイムラー・トラックグループの中での存在価値を高めていることを如実に示すものだろう。栃木県さくら市の「喜連川」は今、世界の「喜連川」に変貌しようとしている。(キャップ)